政府のインフラストラクチャー拡充政策

今回の視察で受講したセミナーを中心にインドの課題を紹介してきたが、それらも徐々にであるが解消されつつあるようだ。進出した企業の最も大きな不 安要因、進出を足踏みをする最大のファクターである交通網の未整備を解消すべく、インド政府は、大規模インフラ整備を急ピッチで進めている。その一つがデ リー、ムンバイ、コルカ夕、チェンナイのインド4大都市を高速道路で結ぶ「Golden Quadrilateral Project」(黄金の四角形)およびその間を東西南北に十字型に結ぶ「東西南北回廊プロジェクト」が開発中だった(2006年6月訪問時)。

ムンバイ、デリ一、コルカタ開を結ぶ貨物用鉄道、バンガロールに2008年にも整備される予定の新国際空港、2002年12月に開設したニューデ リーの市内地下鉄「デリーメトロ」をはじめ、一部わが国の国際協力銀行を通じた円借款による支援も受けながら整備を加速、大都市間輸送の利便性は著しく向 上するものと期待されている。また、総額9兆ルピー(約23兆円)を投じて電力インフラを整備する「国家電力政策」も発表された。しかし、都市周辺部の導 線整備は進んでおらず、電力事情も当面、改善はされないだろうと見られている。
インド政府は、こうした道路網、電力の整備のために、国営企業の株式売却、民力活用をより一層進める計画のようだ。こうした施策も連立政権のデメリットでなかなか、意見がまとまらないようである。

巨大マーケットに、豊富な人的資源、高い教育レベル

10億人を超える人口の約2〜3割が中間層として出現しており、そういった人たちはローンを組めばオートバイが買えるまでなっている。インドの人口の約2割、2億人といえばマレーシアの人口の10倍である。いかに大きな市場が出現しつつあるかということが分かる。

国土が大きいということで、固定電話より携帯電話の普及率も凄い。現在月平均百150万台以上のペースで普及しており、インド電気通信管理局 (TRAI)のまとめによれば4月末時点で、携帯電話の加入者数は5,365万人となり、固定電話(4,650万人)を合わせ、1億人を突破した。
それでもまだ、人口の一割程度である。PPP(購買力平価)で計ったインドのGDPは世界で4番目に位置する。
次にインドの魅力として挙げられるのは、豊富な人材とIT、バイオなど世界的に見てもレベルの高い産業分野の集積である。10億人という人口規模ゆえマン パワーの面で不足はない上、IIT  (Indian Institute of Technology インドエ科大学)などの工科系大学を卒業した即戦力となり得る優秀な人材が毎年数十万人の規模で社会に供給されている店にも注目したい。
大卒若干名を募集する日本企業の求人広告に1万人を超える応募があるなど、少なくとも新卒者は買い手市場となっている。

一般的にインド人の優秀さは、
①ヒンズー共通語、母州語(州毎に20以上あると言われる)、英語の3言語以上を操る
②ゼロを発見した人種であり数字に強く記憶力もよい
③向上心が強く仕事熱心で手先が器用などの点において評され、外資企業の評価も高い。
その優秀さを示す数値が、インドに約2万人の社員を有するゼネラル・エレクトリック(GE)社。その2,000人のエンジニアの約500人が博士号を持つというから驚きだ。
2002年12月にインドを訪れたビル・ゲイツは「インドは人材の宝庫だ」と言い、数日間の滞在中に「今後3年間でインド事業に4億ドルの追加投資をす る」とぶち上げた。それもそのはず、同社社員の2割程度はインド人技術者だそうだ。IBMに至っては3割とも言われている。
これほど、優秀な人材がいるマーケットは世界を見渡してもそうないだろう。このことが多くの企業をインドに向かわせる大きな要因かもしれない。

ニューリッチ層の台頭がインドの経済成長を支える。その数、2億〜3億・・・何と米国を凌ぐ規模。
急速な経済発展に伴い、ニューデリーやムンバイといった大都市を中心にニューリッチ層が台頭している。日本円にして年収20万円という層だが、物価が安いので相当購買力は高い。
また、金融・証券、ITや自動車、バイオ、医療の分野に従事している人たちで、日本円に換算して年収が600万円を超えるニューリッチ層の台頭が注目を浴 びている。彼らは、テレビ・洗濯機・冷蔵庫といった三種の神器のほか、自家用車、オートバイ、世帯3〜4台の携帯電話をもち、家族揃って休みの日には食事 に出掛けたり、休暇には旅行を楽しんでいる。
既にこうしたニューリッチ層の拡大を見越して世界の自動車・家電メーカーは現地生産を開始。次いで医薬メーカーも参入を活発化してきた。また規制がまだ多いが、緩和されれば、金融・小売業といった分野の企業も次々に参入してくるだろう。

こうしたインドマーケットへの日本企業の進出状況は韓国を始めとするポジティブな国に比べて出遅れていた感がある(2006年6月の訪問時の話だが)。
出遅れ感があった日本企業だが自動車・オートモービルの市場では日本メーカーは健闘していた。特に1982 年にスズキがマルチ・ウドヨグ社との合弁事業を始め、大量生産による近代的自動車産業を開拓した話はあまりにも有名である。
今でもマルチ・ウドヨグ社のシェアはNo.1で最も売れ行きのよい小型車はMulti800。価格は約25 万ルピー(約60 万円)と、都市部中間層の平均年収の約2倍程度に当るが、2003年の物品税と自動車ローン金利の引き下げでさらに売上を伸ばしているようだ。
ほかに二輪車の分野でもホンダ、ヤマハが頑張っており、自動車・二輪車の日本の部品メーカーも相次いでインドに進出していることも見逃せない。

しかし、家電市場では日本は完全に出遅れていた。現在(2010年10月)でも世界を席巻しているサムスン電子やLG電子などの韓国勢に大きく水を開けられていた。
その理由は韓国メーカーのマーケットニーズへの迅速な対応だ。インドのマーケットの特徴は、必ずしも欧米や日本、韓国で人気のあった汎用モデルが売れているわけではなく、むしろインド向けにカスタマイズされた家電がインド市場で人気がある。
●音量が大きく壊れにくいカラーテレビ
●シルク製のサリーも洗える洗濯機
●ベジタリアン用の野菜室を設けた冷蔵庫
などが飛ぶように売れていた。
こうしたインド人の嗜好を敏感に察知して製品供給を行い成功したのがLG、サムソンであり、逆に日本企業は富裕層にターゲットを絞った高付加価値商品の生産・販売に注力した結果、2006年時点では差をつけられていた。
そして現在、ようやく日本企業も本格攻勢をかけ始めたようだ。
「ソニーやパナソニックなど家電メーカー各社が日本勢が存在感を高めるに中国・インドなど、現地の生活様式に合わせた売れ筋商品の開発体制強化を始めた」 という記事を見かけた。ソニーは昨年末、中国の旧正月の商戦期を狙って画面サイズ32型の中国向け専用の液晶テレビを投入しシ販売を伸ばしている。受託製 造(EMS)企業への生産委託などでコストを低減し、価格を約4万円に抑えたことが功を奏したそうだ。

パナソニックも4日、インドで現地ニーズに沿った液晶テレビを投入した。音にこだわるインド人の好みを反映し、スピーカーを大きくしたモデルの販売 を始めた。日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査では、インドでは韓国メーカー製が首都ニューデリーでの売れ筋だが、テレビ普及率は3割強と、中国やタイな どの8~9割と比べるとまだ低く、潜在需要は大きいと判断。テレビメーカー各社がアジアで最重要国と位置づけ強化するのが、需要の伸びが著しい中国とイン ドの2カ国らしい。

現地仕様の家電製品投入は、白物家電でも進んでいる。パナソニックが昨年10月にインドネシアで販売したワンドア小型冷蔵庫(容量約150リットル)は、 水道水を沸かしてミネラルウオーター用として保存するスペースを設けたり、化粧品や薬を入れる棚を設置するなど現地ニーズに応えた構成としたところ、販売 は好調という。アジア諸国では、冷蔵庫はまだ扉が1つの「ワンドア」タイプが主流だ。しかも、カラーテレビや携帯電話と比べると普及率が低いため、商機は まだまだありそうだ。

「日本勢が中韓メーカーの壁を崩すには、開発部隊も含めた人員のシフトなど徹底した現地化が不可欠」ということにようやく気づいたようだ。今後の日本企業の健闘を祈りたい。


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