大阪日本橋にある国利文楽劇場の前も桜が満開でした。

大阪日本橋にある国利文楽劇場の前も桜が満開でした。

大阪日本橋にある国利文楽劇場の前も桜が満開でした。[/caption]昨日(2011年4月10日)、文楽「女殺油地獄」(おんなころし あぶらのじごく)を鑑賞しました。

感想から言えば、近松門左衛門の「最高傑作」です。現在の映画やテレビドラマのサスペンス、人情話、痴話など人間の不条理・情念を描いた作品の原形はこの門左衛門か松本清張だと、私は思っています。

何が素晴らしいかと言えば、それは「言葉の美しさ」です。今では大阪弁といえば、あまり品が良くないというイメージですが、
「あーしんど、一日中歩き回ったとて売上は新地の酒の一滴や」
「その甘やかしが、あいつの悪を飼う」
「後生だから、不義になって貸して下され」

という門左衛門の描く言葉が、義太夫の語りと三味線の奏でる幽玄の世界と見事なハーモニーを醸し出した時、気品のある響きへと昇華していきます。

そして大詰め。油屋のご内儀を主人公が惨殺する章。歌舞伎ではもみ合う内に油壺が倒れてしまった為、逃げ惑うては転び、追いかけては転び、油まみれになりながら殺害となるが、文楽は人間ではとうてい出来ないほど人形をすべらせ、油まみれで殺し殺され合う、おどろおどろしさを表現していました。

このシーンは観る者を圧倒します。聴衆は息を潜めて舞台での殺し殺され合う間合いに引き込まれます。何と言っても凄いのは人形遣いが文楽人形に乗り移っているかのように、人形に生命の息吹を染みこませていること。

本当に文楽人形は生きているかのように、殺す側の不条理と恐怖心(実は殺生する側も怖いのです)、そして殺される側の予期せぬ運命へのやるせなさ・死ぬことへの口惜しさ・子供を残して死ねないという情けなさを演じてくれます。

人形遣いも息を切らしながら、殺し殺されあう間合いを人形と一体となって演じます。そして、人形の顔の表情を恐怖・口惜しさ・情けなさによって微妙に変化させていく人形遣いたちの技〜それはもはや人間業とは言えない芸の極致と言えるでしょう。

文楽人形を操るのは三人。
●主遣い(おもづかい):左手で人形全体をささえ、右手で人形の右手を操作する
●左遣い(ひだりづかい):が右手で人形の左手を操作する
●足遣い(あしづかい):両手で人形の両足を操作する。

その三人の心と身体が一体とならないと人形に生命が吹き込まれない。「足十年、左十年」と長い修練を積まないと主遣いにはなれないというから、自分のやっている仕事なんてたいしたことないな〜と思ってしまいます。

最後に、ご覧になっていない方は何のことかさっぱりわからないと思いますが、また「何だ、劇中の台詞も目新しいことはないよ、別に普通の言葉じゃない」という声も聞こえてきますが、人形浄瑠璃の世界は言葉で伝えることはできません。まだ、一度も文楽をご覧になっていない方は是非、一度チャレンジして欲しいと思います。

■Point of View

甘やかし過ぎるとポスターの絵のような男に育つ?!

甘やかし過ぎるとポスターの絵のような男に育つ?!

さて、何を伝えたいのか自分でもポイントを見失いましたが、「その甘やかしが、あいつの悪を飼う」という言葉に私は何故か閃きました。
仕事柄、営業担当者をマネジメントする管理職や教育担当者の方と数多く会いますが、皆さんそれぞれそのポリシーが違います。
●褒めて育てる
●厳しく育てる
●その両方をうまく組み合わせて育てる
という、3つのタイプがありますが、「褒め過ぎ」も、「厳しくし過ぎ」も いつの時代も弊害を生むのでは?とこの「女殺油地獄」を観ながら、思った次第です。

●スパルタ式に訓練するとギスギスした組織となり、 出来る営業担当者とそうでない担当者の差も開き、結局は収益を上げる集団にならない。
●「褒めて育てる」も 頃合いを見誤ると、「その甘やかしが、あいつの悪を飼う」という言葉の通り、甘えの要素を増幅させていき、打たれ弱い集団になる。

じゃ、「褒めて育てる」+「厳しく育てる」をうまく組み合わせて育てる・・・がベストという結論になりそうですが、実はこの仕組みを創るのが最も難易度が高いと思うのは、私だけではないと思います。

褒めること、厳しさをもつこと〜その二つをブレンドする教育の仕組みを整備していくこと・・・それは本当に昔からの永遠の課題として私たちの前に立ちはだかっている。そう思った文楽鑑賞の一日でした。

●ご興味のある方は、あらすじをこちらに書いていますのでどうぞ、ご覧ください(歌舞伎版のあらすじですが、話はほぼ同じです)。

●文楽についてご興味のあるかた、こちらのサイトの解説がわかりやすいです。

国立文楽劇場 の場所は

 

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