〜パリオペラ座の夜に見る経済的インセンティブ〜
長年の夢であったパリオペラ座でバレエ版「マノン」を鑑賞しました。世界最高峰のバレエは言うまでもなく、劇場のネオ・バロック様式の彫刻の数々、豪華絢爛の装飾の空間に身も心も奪われるひとときでした。そうした感動と同時に、文化を基点とする経済的インセンティブの大きさについても考えさせられる一夜ともなりました。

それではどのようなインセンティブが生まれるのでしょうか?ご興味のある方は下記の映像をご覧ください。
●劇場内の様子

映像の来場者のゴージャスさを見る限り、チケット収入もさることながら、来場者のファッション代、前後の飲食代を年間で総計すると相当な額になることが想像されます。それに加え、裏方を含め従業員が約1,600人という雇用も創出しているわけです。

しかし、劇場単体、オペラやバレエだけの収入だけでは悲しいかな、採算は取れないようですね。収入の50%以上が国からの助成金〜パリ・オペラ座が公開しているバランスシートを見ると、毎年約1億ユーロ(約106億円)を国が支援しているわけです。


文化事業の公演収入だけでは商売の妙味がないという点から、日本を含めて多くの国で文化振興に消極的になるわけですね。それに加えて、不景気になるとすぐにやり玉に挙げられる。

それでは、「文化事業は儲からない」という事実にもかかわらず、フランス国家は何故そこまでして自国の伝統文化の保護を行うのでしょうか?それは国家のプライド、ブランド構築ではないでしょうか?

劇場自体、オペラ・バレエというコンテンツが磁力になり世界中から鑑賞しに来るという単純収入、それに加えて宿泊費、食事代、ショッピング費用を加えるとかなりの相乗効果が見込まれます。

それに加えて、国家の宝である歴史的資産である劇場、バレエ、オペラを保護し、発展させることでフランスのブランドとなり、トータル的には国家のプラスになるという考えだと思います。

そして、文化・芸術国家というブランド育成によって、政治・経済交渉にも有利に働くという認識も高いのでしょう。

サルコジ氏のとった財政緊縮策はパリオペラ座にも波及し、助成金カットやダンサーを含めた裏方のスタッフの年金カットにまで焦点に当てられたようですが、結局、サルコジ氏はオペラ座に対する削減の実施を止めたそうです。

が、結局、緊縮策を取るサルコジ氏は先日の大統領選でオランド氏に敗北しましたね。フランス国民はやっぱり、緊縮というのは嫌いなようですね。

話は長くなりましたが、パリオペラ座の夜は最高峰のバレエに酔いしれるというほかに、文化が発する経済的インセンティブを含めたパワーについて考察できたという、至福の時間となりました。


世界中が不景気なので、大きい声では言えませんが、日本の「お得」「安いよ〜」の連呼にはもう癖壁!「いくら安いと言っても、要らんモンは、イランわい!」と叫びたくなりますね。と言うわけで、最高のドレスを着て、最高のパフォーマンスを見ることの経済的インセンティブを日本は忘れているのではないでしょうか。

日本では休日を増やす、長期に旅行に行く、スポーツを楽しむ、音楽やダンス、文化活動など、心の豊かさに投資する・・・そうしたマーケティングはまだまだ開発の余地があるはずです。

消費税アップや緊縮策をする前に、世界に冠たる歌舞伎や浄瑠璃、日本料理のワールドワイドのマーケティングを戦略的に行うべきではないか!

日本もエエ加減、世界に誇る劇場をつくったらどうですか?日本の器はしょぼい、セコイ、同じならゴージャスに行こうぜい!・・・と強く思うわけです。

以上、今のご時世、派手に投資せい!という話を書くといろいろ非難されそうですが、今の不景気に文化事業推進のお金が出にくい、また出せないというのも事実・・・なら、何故バブル期に歴史的に、未来永劫残る名劇場を建設できなかったのか?と、悔やまれてなりません。

事実、フランスもオペラ座などの歴史的建造物は19世紀のバブル期に造ったのですからね。日本は何故、それができなかったのか!いったい、あのバルブ期に降って湧いた金はどこに要ったのでしょうね?

おっと、肝心の演目の概要を書くのを忘れてました。
●演目:マノン あらすじは(オペラ版の内容ですが、話は概ね同じです)
●鑑賞日:2012年5月7日(月)
●場所:パリオペラ座 ガルニエ宮(Palais Garnier)
●配役
・マノン:イザベル・シアラヴォラ Isabelle CIARAVOLA
・青年グリュー:ロリアン・マニュネ Florian MAGNENET

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