#7日間ブックカバーチャレンジ 7日目
iCon Steve Jobs「スティーブ・ジョブズ・偶像復活」
The Greatest Second Act in the History of Business
2005年 発刊/ジェフリー・S・ヤング &ウィリアム・L・サイモン (著), 井口 耕二 (訳)
私が「チャンスをピンチに変え続けた男(笑)」なら、「ピンチを次々にチャンスに変え続けた男」がスティーブ・ジョブズと言えるでしょう!
この本が発刊されたのは2005年で、まだiPhoneは発売されていない。ジョブス氏の波瀾万丈の人生を客観的に迫ったノンフィクション。伝記であり、ビジネス書であり、大河ドラマのような山あり谷ありのドラマ性も満載!ジャーナリストである著者が、緻密な関係者の取材を通じて、ジョブズの表と裏、天才的な閃きと驚くべき実行力など、生身の人間をあぶり出している。
この本は、ジョブス氏自身は伝記として認めていない上、Apple社が著者を出版差し止めを求めて*変更を求めた。*『アイコン』(iCon)というタイトルが、アップル社のリンゴのロゴと、シンクロさせている写真が、製品風に見えるようにしているのは法令違反という内容だそうだ。
Appleの訴えはマスコミが一斉に報道して話題沸騰!これに素早く反応した出版社は印刷部数を倍増して、発売日を早めて素早く発売。ベストセラーになったという、いわく付きの書だ。
だが、内容は何度読んでもわくわくする。何とジョブス氏は生まれてすぐに養子に出されて、しばらくは実の両親のことを知らなかったという逸話から始まる。
そこからは、大学でカリグラフィー(古代ヨーロッパ発祥の“文字を美しく表現する手法)を学び、心を魅了するポテンシャルを“デザイン”の中に見いだし。生涯、Appleコンピュータ、ipod、iPhoneに至まで、デザイン性にこだわり続けた。
在学中、ヒューレットパッカードパッカードのインターシップで、のちにをApple社を共同で作ることになるウォズニアックと出会う。そこからは波瀾万丈という言葉で言い足りないくらいの苦境の連続。※ちなみに、大学は中退。
長者番付に載る大富豪になったジョブスは1985年に、創業したApple社から追い出される!そして、退社後、Next社を設立するも商業的に大失敗。(ただし、ここで開発されたOSは後のMacのOSの礎となった)
反転攻勢の契機は、ピクサー。あのスターウォーズのジョージ・ルーカスからCG部門を買い取り、制作した「トーイストリーズ」(ディズニーが配給)が大ヒット。
後に、2000年代前半にヒット作がなく、経営の苦境に陥っていたディズニーにピクサーを高額で買収させた。20年前に、1,000万ドルで購入した会社ピクサーが、74億ドルで売れたというもの凄い話だ。その時、ジョブス氏はディズニーの個人筆頭株主となっている。
一方、Apple社には1997年に電撃復活!2011年10月5日に永眠(享年56歳)するまで、iMac、iPod、iPhone、iTunes(音楽配信)とヒット商品を輩出し続けた。特にiPhoneは世界のライフスタイルを一変させている。
この本の面白いところは、インドでの放浪体験から禅に傾倒して菜食生活になっていくストーリー。そして、実の母親との再会など、など。ジョブス氏の生い立ちやプライベートが描かれていたこと。
大富豪になったジョブス氏が家庭では、古くなった洗濯機の買い換え、新しい洗濯乾燥機選びは家族総がかりのプロジェクトになり、2週間も話し合いが続いてという、ほのぼのする話もあるのも楽しい。
生後まもなく里子に出され、大学も中退するなど、誇れる学歴や学位もない青年のサクセスストーリー。その真髄は、世の中の当たり前の情報や評論家などが主張する近未来の姿などは全く無視。
自分の視点で世の中、人々のライフスタイルを分析し、天才的な閃きでCGアニメーションのポテンシャルを見抜きピクサーを飛躍させた。そして、iPhoneで社会は変わる!・・・と確信して、実施にそうなったことでしょう。
最後に、ジョブス氏の「スタンフォード大学卒業式辞」(2005年6月)が素晴らしいので、興味のある方はご覧ください。
この映像は3つのストーリーで構成されていますが、私は次の点で感銘を覚えました。
1.Connecting “dot”〜「点と点を結べ」
一つ一つは関係のないように見える点=人生の経験、チャレンジを結んでいけば、「新しいものが創造される」。これは私の勝手な推測ですが、これはジョブス氏が大学時代にカリグラフィーを学んだ時に、点と点とを結んでいくことで、新たなデザイン性の高い文字が創造できるというプロセスで学んだのではないでしょうか。
- ハードディスクの発達 + 音楽や映像などの圧縮技術の発達 + ネットワーク技術の発達=ipodとiTunesの誕生!
- これは自分たちの仕事にも通じますよね。一見関係のないことを結びつける。商品開発はもちろん、営業でもいろいろな人に出会い、いろいろなことに興味を持ってチャレンジしていれば、視野が広がり人脈が広がる。
2.Lost & Love〜「喪失と愛」
失ったもの=「自身が創設したappleから追い出される」。愛=「自分の進むべき道、テクノロジーとappleを愛し続けたこと」。
- 「信じ続ければ、夢は叶う」〜私たちの人生でも忘れてはならない基本精神ですね。
3.Deth 〜 「死」
すい臓癌におかされ、医師団に死の宣告を受けたが、奇跡的に手術で助かった直後にこの式辞を述べている。
- 死は必ずやってくると言う事実。私たちは時にはそれを恐れ、時にはそれを意識的に忘れようとします。
- でも、同じ死ぬなら、生きている間に失敗することばかり考えずにチャレンジしよう!
- これは黄泉の世界の手前まで行ったジョブス氏だからこそ言える言葉ですが、重みがありますね。
そして、最期はこう締めくくっています。Stay hungry! Stay Foolish!
顧客と企業を心でつなぐマーケティング・プランナー
株式会社ビジネスラボ
近江 隆/オウミ タカシ
公式サイト https://blab.jp/