「大国の興亡」ポール・ケネディ著 上・下巻の大作
発刊1987年、私が読んだのは1993年の改訂版。
 
 

1500年の中世から20世紀後半までの大国の盛衰と大国同士のせめぎ合いを政治力・軍事力と経済力のバランスから、緻密な調査と検証で見事に書き上げた秀逸な歴史読本。

ハプスブルク家の盛衰、ナポレオンの欧州統一の野望から、産業革命後のイギリス・フランス・ロシア・プロイセン(後のドイツ)の台頭。そして第1次世界大戦と第二次世界大戦を経て、ソ連(現ロシア)とアメリカの2極対立へ向かう歴史が時間軸で理解することができる。

そして、最終稿には現在にも通じる中国の台頭や日本の微妙なポジショニング、発展途上国の躍進など、ソ連・米国の2強時代から移行していく混沌とした未来図を予測している。

この本では、“歴史から学ぶ” “歴史は繰り返される”といういうシンプルな論点では計ることができない。人類と国家、文明はもっと複雑多岐な要因が絡み合って、繁栄と衰退を繰り返すパターンがあるようだ。

しかもそのパターンも一筋縄ではない。ハプスブルク家は膨大な資産を有したが、領土を広げすぎて、そのバランスを保つための軍事費の肥大化と統治下での対立・抗争で、統治能力を失っていった。

一方、イギリスや米国は19世紀から20世紀初頭までは軍事費を抑制しながら、産業を発展させて繁栄した。しかし、国家が大きくなると他国と利害関係が生じ、新たなパイの争いに巻き込まれて、軍備拡大に膨大な予算を投じざるを得なくなる。そして、それが国の経済を圧迫していく。

日本も同じく、平和憲法と米国の庇護で経済を発展させたが、国際的な圧力から軍事強化の方向に向いている。つまり、平和と産業を重視しても国際的な競争の渦に巻き込まれて国家予算が軍備拡充に向いていくことで、国家力が落ちていく。一方、軍事大国になって広大な領地を保有しても、その統治費と軍事費が足かせになり、衰退していく。

そうした様々な要因が絡み合って、国家が興亡を繰り返すというプロセスが見事に描かれており、結局は長らく繁栄を続けるための鉄板の法則はないということだ。

そうした不確実な国家間の興亡に加えて、本書ではあまり書かれていないが、環境破壊や天地異変、今日のウィルスによるパンデミックなども絡んで、人類の未来は予測不可能な状態と言えるでしょう。

“歴史は繰り返される” VS “歴史の過ちから学ぶ”。

そのどちらを選ぶのか?などと、考えさせられる。今の中国と米国のコロナウィルスの責任の擦り付け合い、それを経済報復と絡めている現状では、“歴史は繰り返される” が濃厚か?!

どちらにしても地球も人類ともに“形あるものはやがて、いつか無くなる”という事実がありますが、その運命を早めるか?それとも他の星に移住することが可能になるまで、国家間の利害を超えて英知を集めていくかのターニングポイントが、現在の世界の様相と言えるのかもしれません。

上下巻960頁で、読破するのは並大抵ではないが、“歴史から学ぶ” “歴史は繰り返される”という観点からは、今も色褪せることのない良書。芸術でも音楽でも、そして文学でも最高峰の逸品は時空を超えて、そのロジカルはゆることがないと思わせる内容だ。

当時、イェール大学の歴史学の博士であったポール・ケネディが執筆した時はまだ、ロシアはソ連で米国との2強時代、ドイツは東西に分かれて、中国もまだそれほど台頭していない時代ですが、今でも学ぶべき点が多い逸品です。

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