先日、「マイケルムーア・世界侵略のススメ」を鑑賞してきた。予告編は、少々オチャラケでふざけているが、結論が言えば、実に真摯に真面目に米国の“今”と比較していた。
結論から言えば、この映画は「ある視点」。訪問した各国(チュニジアを除いてヨーロッパ)のポジティブな面にフォーカスしている。
ネタバレにならぬ程度に、あらすじを紹介。
- フランスの小学校:給食がフレンチの星クラス!コカコーラやフライドポテトは食べない! → 米国は、ファーストフードの生みの親だから、当然、貧弱な給食。
- イタリア人:有給休暇(休暇中でも給料が貰える)が、年間8週間で昼休みが2時間!・・・家に帰って食事! → 米国は結構、有給休暇がない、もしくは少ない企業が多いそうだ。
- フィンランド:宿題がなく、プロジェクトチーム型の楽しい授業で学力世界No.1! → 米国、世界学力テストでふるわない。
- ドイツ:従業員の要求をすべて採用する鉛筆メーカー → 米国でそんな企業はない。日本もないけど!
- ノルウェー:囚人がリゾート地みたいな別荘で暮らし。海と太陽、緑豊かなところでサイクリングなどをしている! → 米国、暴力と権力で監視、極悪犯は独房。
- ポルトガル:麻薬が犯罪にならない?! → 米国はご存知の麻薬犯罪大国。
- スロベニア:大学までの授業料が無料。しかも留学生も「授業料ゼロ!」 → 米国の大学授業料の高さはベラボウで、多くの学生が教育ローンの返済で生涯苦しむとか。
- チュニジア:革命後、女性が権利を獲得するために葛藤する姿を紹介。そして、ある程度の権利を女性たちが勝ち得た/strong> → 米国は一般的に女性の権利は高そうだが、富裕層だけに限られている?
ポルトガルの「麻薬が犯罪にならない?」とノルウェーの「囚人がリゾート地みたいな別荘で暮らし」は、日本ではとうてい導入できないというか、議論もされないと思う…。イタリア人の有給休暇、フランスの食育、ドイツの経営者の考え方、フィンランドの教育は、学ぶべきコトが多かった。というか、うらやましい!と思った次第。
特に、フィンランドの教育については、2003年当時、教育委員会の視察研修の提案でいろいろ調べたので、親近感があり、「ゆとり」=「怠ける」と判断して、詰め込み教育に再度方向修正した日本の教育にがっかりしながら、感心しながら見入った。
フィンランドの教育については、ご存知の方が多いとは思うが、所謂「ゆとり教育」である。2003年当時、調べた内容を紹介する。
「ゆとり」=「怠ける」ではなく、
- 「ゆとり」=「自由な発想で、事実にフォーカスし、自身で考え、チームで意見交換しながら、答えを探していく」という教育。
- マーク方式ではなく、基本は自由記述。
- 企業のプロジェクトチーム型と同じく、チームで答えを探していく。
例えば、
- 南米各国のGDPを調べて、GDPの違いは何を示すのか?をチームでディスカッション。
- あるチームは、GDPが低い国は、第一次産業が中心で、豊かな国は、付加価値の高い外貨で稼げる工業製品や第三次産業が盛んである・・・と導き出す。
- そして、その結果はプレゼンスタイルで、生徒みんなの前でチームが発表する。
という流れの授業をやっている。しかも、それを15歳の日本で言えば、中学生が行っている点が凄いの一言!それも2003年当時に、そうした教育スタイルが完成してたのですね。
■フィンランドが高い学力を示したのは「OECD」生徒の学習到達度調査(PISA)
出所:国立教育政策研究所
OECD(経済協力開発機構: Organisation for Economic Co-operation and Development)が進めているPISA(Programme for International Student Assessment)と呼ばれる国際的な学習到達度に関する調査で、2000年から3年に1度実施されている。
PISA調査では15歳児を対象に1.「読解力」、2「数学的リテラシー」、3「科学的リテラシー」の三分野について、3年ごとに実施しており、私が調べた2000年当時の「読解力」のテスト結果は次の通り。
*2000年調査には32か国(OECD加盟国28か国、非加盟国4か国)で約26万5,000人の15歳児が調査に参加した。
フィンランドが、ダントツの成績を収めているのが、わかるが、今、最新情報の2012年のテスト結果を見たら、日本をはじめとして、東アジアの各国が躍進している。
■2012 PISA学習到達度調査の国際比較
日本や東アジアの各国は、勤勉で真面目なので、詰め込み教育を止めて、このOECDのテストで高得点を獲得するための「詰め込み教育?」ではしたのだろうが、凄い躍進であります。
ただ、テストで高い結果を示したとしても、フィンランドのように楽しく自由闊達な雰囲気で授業が行われているかが、ポイントだ。
このマイケルムーアの映画を観る範囲では、フィンランドの学生は自由な雰囲気で、宿題が殆ど「ゼロ」。母国語のほか、英語やフランス語、スペイン語を話すマルチリンガルな学生が多い。世界中の人々と楽しく話せるコミュニケーションスキルを既に学生時代に身につけており、日本人みたいに大人になってから、英語に四苦八苦しなくて済むというのは、素直にいいな〜と思った次第。
また、宿題がゼロで、授業時間も少ないので、人生を楽しむノウハウも自然と身につくわけだ。
テストで高い点を獲得するのは大切だが、人生を楽しむノウハウが身につくように、大人が導いているという点で、フィンランドの教育は賞賛されるべきでしょう。
やっぱり、「ゆとり教育」は間違っていなかった・・・「怠ける」という流れになってしまったことが間違いだった。と思う次第であります。
それは、ともかく、2時間というコンパクトな時間で、ある偏った視点ですが、「世界のいいとこ」をポジティブな視点で、面白く学べるという点で、「マイケルムーアの世界侵略のススメ」は、イチ押しです。
ちなみに、2012 PISA学習到達度調査の問題は、http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/pisa2012_examples.pdf で公開されている。
私は、恥ずかしながら、ちっとも解けませんでした(^_^)・・・やはり、10代の柔らかい頭は凄い!
■ブログ執筆者 近江 業務案内
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