松本清張「神々の乱心」
最晩年の未完の大作
 
#7日間ブックカバーチャレンジ7日間、1回投稿という決まりだが、どうしても外せないと思い、勝手に追加。

NHKは流石に有料チャネルだけあって、見応えのある番組を提供してくれます。先日、「100分de名著」(Eテレ)という番組で、紹介されていた「神々の乱心」が面白そうだったので、早速、Amazon Kindle(電子ブック)で読んでみた。

 
これは面白い!かつ怖い!
時は昭和8年、満州で設立された神道系の新興宗教団体の女官の恐ろしき予知能力を利用して、天皇家の後継を転覆せしめようという陰謀を特高の刑事と華族のひとりが追う様子がミステリータッチで描いている。
 
新興宗教団体の陰謀とは、「三種の神器」の物的証拠を捏造。陸軍や宮中の一部の人々に本物と信じ込ませることで、天皇家の正当性を根底から覆そうとする流れだ。
残念ながら、絶筆のため物語のファイナルはない。
 
しかしながら、古来より誰も見たことがないと伝わる「三種の神器」の存在をちらつかすことで、人々の心を乱れさす。誰も見たことがないシンボル・象徴。それを何の疑いもなく誇示された時に、ひれ伏してしまう人間の愚かさを見事に描写している。
 
ヒトラーや記憶に新しい日本の新興宗教の手段・・・ヒンドゥー教のシヴァ神の生まれ変わりであるなど、と。数々の神々を引用し、嘘八百並べて、魂の救いを求める若者を落とし入れていった“心の闇”をくすぐる企みと全く同じ手法だと感じた。
 
国家も人々も超人的な救いを求める瞬間、時代は怖いと思う。ウィルスと戦っている今、こんな詐欺師集団に先導されてはいけないと強く思った次第です。

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