日本でも富山市、熊本市をはじめ地方都市で、2000年頃より※「LRT」を基軸とする交通政策による「まちづくり」が盛んだが、欧州に比べて中途半端の感は否めない。さらに、近年では栃木県宇都宮市がLRTによる高齢化が進む街の交通を再編していくという計画を聞き、3年前(2016年12月)にフランス・ストラスブールでのLRT視察のことを思い出したので、その成功した仕組みを紹介したい。

ストラスブール市街地風景

※LRT/ライトレールトランジット (Light rail transit, LRT) とは
低床式車両(LRV)の活用や軌道・電停の改良による乗降の容易性、定時性、速達性、快適性などの面で優れた特徴を有する次世代の軌道系交通システムのこと。

しかしながら、日本の場合、交通政策に限らず「まちづくり」が中途半端に終わっているような気がします。その要因は、緊縮する地方財政において投資額をそうそう捻出できないことが大きく占めているが、自治体による強力なリーダーシップの欠如で、市民・企業と一体となった強力な協調の仕組みが取れないことが阻害要因となっているように思います。

それに比べて、欧州では成功事例が多い。なかでも数年前に訪れたフランス・ストラスブールの市街地を見た時に感嘆した。その光景には車がゼロ!なのである。実際には飲食店などに運ぶ車は一部、市街地に入れるようだ。

その大きな成功要因は、1989年に就任したC・トロートマン氏の強力なリーダーシップにあるようです。当時の市長であるトロートマン氏はトラム推進派で、その信念は全て「自動車減らし」に凝縮される。その核となるプロジェクトが「LRT」の整備。オイルショックを契機に持ち出されたトラムの計画は、長い間、反対派の強硬姿勢で実現できなかったが、粘り強く議会と市民に働きかけて、遂に’1992年、議会の承認を得て、総工費19億4千万フランを投じ、1994年に全長9.7キロの路線が開通したという。

その後、1998年に9月にフランス全土で実施された「自動車なしの日」に、ストラスブールが先導役となり、21世紀に入ってもさらなる利便性と温室効果ガス排出の削減に取り組む姿勢は継続されており、さらなる進化を遂げているようだ。

1994年に最初の路線「A  Line 」が開業して以来、B・C・D・E・Fと次々と整備され、現在は6路線。市内をくまなく網羅しており、自家用車を持っていない市民も楽々で市内へ出掛けることができ、また各路線とも5分間隔で運行されているからでビジネス通勤でもプライベートの利用でも重宝されている。さらに、郊外では専用軌道で高速で走るので利便性も高い。

もうひとつの大きな成功要因は、充実した路線網に加えて、PARK&RIDEが徹底されていることだ。例えば、「Hôpital de Hautepierre」という駅には大型の駐車場が用意されており、そこで路面電車に乗り換えて、車なしで市街地に向かう仕組みとなっている。
また、PARK&RIDEのほかに、郊外ではバスレーン、一般車道と路面電車の軌道、歩行者路の区分けされており、スムーズなトラフィックの流れが構築されている。加えて、バス移動の乗客は路面電車の乗り場に横付けされるバスから、すぐ横の路面電車の電停にダイレクトに乗り換えることができるという便利さだ!

最後に、ストラスブールのLRTの特徴と成功要因を紹介したい。

  • 従来の路面電車のイメージとは、異なり騒音が少ない。
  • なめらかな動きをし、幅も広く乗り心地が良い。
  • 低床で高齢者・ハンディキャップのある人や乳母車を使う人も乗り降りしやすい。
  • 最大7車両・290人が乗車でき、日中は5分間隔で運転するので、通勤にも便利な乗り物である。
  • 郊外では専用軌道が確保され、信号も少ないので、スピーディに乗客を運ぶ。
  • デザインがスタイリッシュ!旧市街の街並みにもしっくりと溶け込み洒落ている。

など、例え自動車をもっていない人も、都市生活の利便性は損なわれることのないように、工夫されていることが特筆すべき点です。路面電車の整備と共に、公共バスとの連携も強化。また、トラムの駅の近くに駐車場を整備し、自動車とトラムへの乗り継ぎをスムーズにしたり、自転車専用道路や駐輪場を確保するなど、自動車の利用を減らすための都市インフラの整備を続けている。

■LRT導入効果/データが古く2000年当時ですが、そこ効果はわかる。/国土交通省資料より

  • 同市の自動車保有者の世帯率は、0.69%から0.65%とわずかながら下がった。
  • 都市交通の自動車の割合が、67%から55%へと減った。
  • 公共交通機関の依存が11%から、17%へと増加した。
  • 自転車の利用が、22%から25%に増加した。
  • 開通直後の利用者数の年間5,4000人が、1996年には90,000人に増加した。
  • 旧市内の自動車交通量も、1980年レベルにまで下がった。

このような車を減らす交通政策と平行し、モール街が百貨店を核に、高級化と専門化を進めてきた。自転車や路面電車で軽快に商店街にやって来る。そして、街につくと排気ガスのない商店街を気ままに散策する・・・そんな生活スタイルがすっかりと定着。有名なゴシック様式の建物と古い町並みを求めて、外国から訪れる観光客にもトラムと歴史的な町並みのモールは、きわめて好評のようで、モール街も私の訪問時、大いに賑わっていた。

ストラスブールのまちづくりの成功モデルは「欧州版・三方良し!」である!

  • 自治体:市長の強力なリーダーシップにより、並みいる反対派を粘り強く説得し、協力を表明するまでに至る
  • 市 民:歴史的な建造物・街並みを保存してきた心意気や知恵のDNAがあったのか…全面的に自治体をサポート
  • 企 業:市街地の街並み整備・区画整理・商業地の空間デザインに全面的に協力。車の規制にも協力

その結果、単なる交通網の整備だけではなく、快適な移動環境・買い物環境を整備することで、

車の排気ガス・クラクションのならないモールに来街!・・・バリアフリーで車いすの方の購買需要も喚起!

利便性だけではなく、快適な空間を整備することで、経済的インセンティブも生み出した見事な事例だと感じた。

日本でも欧米に習い、LRTを基軸とする「まちづくり」には大いに賛成だが、特に今回紹介したストラスブールのような行政・市民・企業の三位一体の協調体制の構築が急務と思われる。

 

私が視察時に撮影した映像です。もしよろしければご覧ください。

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