ここまで進んでいる観光庁の試み。

去年(2014年)日本を訪れた外国人旅行者は1,341万人と、過去最高を記録。国は5年後に、さらに2,000万人まで増やす目標を掲げている。 そのためには、外国人旅行者の6割を占める個人旅行客を取り組む必要がある。 そこで、実施したのが、スマートフォンを使った個人旅行の足取りをビッグデータとして集める試みだ。

■調査概要
●実施月:2014年11月。
●調査ツールには、乗り換え案内などで、人気のアプリ「NAVITIME for Japan Travel」が活用された。
●空港などでダウンロードを呼びかけ、同意を得た観光客から位置情報を入手。
●いつ、どこから、どこへ移動したのか、ルートや滞在場所が詳細にわかる仕組みを活用。
●データ数:数千人の外国人の移動データを収集した。

■集められたデータは、下記の図のように、ビッグデータのサーバーに格納される。 move

■分析結果

1.外国人が長く滞在した場所を地図上に重ねると意外な事実が

●東京で人が集中していたのは、有名スポットではなく、渋谷のスクランブル交差点だった。

●TripAdviser、japan-guide.com、japantravel.comなどの外国人に有名なサイトで、日本のレアなスポットとして扱われたのがきっかけ。

●渋谷の交差点は日常の中で自然に生まれたから風景だから面白い。外国人にとっては、観光客向けに作られた施設では味わえない、本物でユニークな経験をすることが大事だとわかる。

 

2.従来、自治体が行ってきた大規模キャンペーンは効果薄

●さらにビッグデータからは、日本各地を売り込んできた従来のプロモーションがあまり効果を上げていないことも明らかに。

●全国規模で見ると、外国人観光客の訪問先に大きな偏りが。

●集中していたのは東京と大阪を結ぶ区間。いわゆる「ゴールデンルート」と呼ばれ、富士山や京都などを巡る日本観光の定番コース。スキー場が多い北海道や原爆ドームがある広島など、世界的に有名な観光地に限られていた。

逆に言えば、地方を開拓すれば、成長の余地が大きい。


■では、どうすれば良いのか?

1.山梨県の「新倉山浅間公園」が外国人に人気!

●山梨県は、県内の外国人観光客の移動データを分析。県内一の観光地である河口湖周辺に人が集中している一方、意外な場所に外国人が集まっているのを見つけた。

●電車を降りてすぐそこにある場所ではない。そこまでして行きたいのか?…そこには、戦後建てられた五重塔と富士山のコントラストがあった。

●そこに実際に行くと、タイからの観光客が多い。聞いてみると、タイの旅行サイトで人気スポットになっているという。

●可視化されたデータをどのように広告・販売流通をつくっていくか?・・・山梨県は戦略を練っているそうだ。

五重塔と富士山のコントラスト。私が行った日は生憎の曇。富士山が見えなかった!残念無念!

五重塔と富士山のコントラスト。私が行った日は生憎の曇。富士山が見えなかった!残念無念!


 2.飛騨高山の里山サイクリング

●外国語ができるガイドが外国人を案内しながら、日本の原風景のような里山を巡るツアーが大変人気。

●そこでは農家の方が働く姿であったり、農家の方が軒先でお茶をどうぞと差し出されたりと、日常の中で自然に生まれたものが体験できる。

つまり、造られたテーマパークや高層ビル街よりも、日本ならではの日常風景が外国人に人気がある。

 3.東京・馬喰町のホテル

●300軒以上の卸売り業者が軒を連ねる問屋街で、めぼしい観光施設はないが、駅の周辺の15軒のホテルに、4年ほど前から、外国人の姿が目に付くようになった。

●先駆けは「ホテル柳橋」。客の7割がリピーター。サウジアラビアの秋葉原オタクなどが、泊まっている。

●今では、TripAdviserでランキングの第4位に。

●その理由は、飛行機が早朝に着いたとしても、無料でチェックインの時間を早め、部屋を用意。

さらに心がけているのは、日本語を織り交ぜてフレンドリーに会話すること。

●特に「ありがとう!」を多く使い、チェックアウトの時に、外国人客に「サイトに感想をお願いします」と声を掛ける。

●こうした努力の積み重ねで、世界の旅行者のファンをつくっている。

 

4.観光庁×NTTデータがTwitterのつぶやきを分析

●観光庁は、日本を旅行した外国人のつぶやき5万件を試験的に収集。

●例えば、外国人が関心を持っている食べ物の1位は、すし。次いで、ラーメンであることがわかった。

●つぶやきを集めるメリットは、プラスの評価だけでなくマイナスの評価も把握できる点。

Twitterの「つぶやき」を分析し、

 「つぶやきの量」 × 内容(Positive or Negative)に分類

 ・量が多ければ:人気スポットということであり、

 ・Positiveな意見は、広告に活用すべき

 ・Negativeな意見には、改善策を「つぶやき返す」

 などの施策を講じる礎となるわけだ。

●こうしたディープな旅行者の可視化を図っていくことで、繰り返しやって来るリピータの育成につなげたい意向だ。

★私感
ただし、商品開発は大変だ。富士山・京都などのゴールデンルートをめぐるツアーで、アウトレットやデパート、ドラッグストアで爆買いのほうが商品開発は絶対に楽。

例えば、事例で紹介した山梨県の「新倉山浅間公園」周辺には消費するような場所・・・土産物屋、宿泊施設、商店街などなく、やや広域的に観光商品をつくっていく必要があるだろう。しかし、ボロもうけなどは期待できない。

いわゆる、観光商品もロングテールの時代になった今。小ロット他品種を集めて、総需要で利益を上げるという課題に直面していると言える。

どちらにしても、楽に儲ける時代は去り、知恵と創意工夫、集客の仕組みづくりが必須となった今、常に消費者と世の中の動き、そして最先端技術をマーケティングでどのように活用していくのか・・・答えはまだ出ていない。企業と政府が一体となって取り組まなければならないテーマです。

 

■ブログ執筆者 近江 業務案内

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