株価の動きから見た新型コロナウィルス向けワクチン&治療薬の動向

誠に残念ですが、市場に流通するには「少なくとも1年から1年半はかかる」と言われているワクチン開発。ワクチンと治療薬に関わる有力な製薬会社とバイオテクノロジー企業の動向をここ3ヶ月の株価の動きと絡めて、俯瞰してみました。

と、書いている瞬間も「ギリアド、新型コロナ薬試験失敗と報道 WHOが誤って情報開示」(Newsweek2020年04月24日)という報道が出て、ビックリ。コロナウィルスへの期待から企業の実力以上に株価が急騰したり、「あっちのバイオ企業が臨床試験開始!」いう情報流れると、急騰後の製薬企業から旬の企業へ株投資が移っていく!・・・真実は何なのか?・・・本当にワクチンと治療薬は登場するのか?等、株の世界もパンデミックの影響で錯綜していますね。

そうした意味で、株価の動きは的確なウイルス開発の状況を的確に反映していないという事実はありますが、あえて株価とワクチン開発動向の関係を考えてみました。私は株トレードのプロではありません。あくまでも自分の見聞を広げるためにまとめた内容ですので、参考程度にご覧いただければ、幸いです。

また、株の購入を誘導する記事でもありません。最新動向をまとめて、自身の知見を広げるために書き記した内容です。この3ヶ月で驚異的な株価上昇が見られるバイオ医薬のベンチャー企業。株価の上昇とリンクして、1日も早いワクチンと治療薬が実用化を願うばかりです。

有力ワクチン開発企業の株価の動き/2020年2月4日〜4月22日
※増減率の基準は2020年1月24日
下記の表の見方
●各企業の上段が2020年1月24日に対する増減率
●各企業の下段が株価(USD)/アンジェスのみ日本株で株価は円

  1月24日 4月22日 期間中の高値
Inovio Pharmaceuticals 0.00% 176.18% 232.31% 3月9日
4.24 11.71 14.09
Moderna 0.00% 142.42% 166.95% 4月21日
21.12 51.20 56.38
Johnson & Johnson 0.00% 3.15% 4.50% 4月22日
148.32 152.99 155.00
Novavax 0.00% 173.97% 205.13% 4月20日
7.80 21.37 23.80
アンジェス 0.00% 65.22% 69.88% 4月21日
601 993 1,021

また、会社概要ならびに開発状況は次の通り。COVID-19向けワクチン開発状況はWHOの発表資料などを参考にまとめましたが、あくまでも参考ということでご覧ください。
※売上高・営業利益の単位:百万USD,アンジェスのみ百万円

Inovio Pharmaceuticals Inc./イノビオ・ファーマシューティカルズ
基本情報 業績
市場名 NASDAQ 売上高 4
業種 医療関連/バイオ医薬品 営業利益 -111
本社 米国ペンシルベニア州 時価総額 17.09億ドル
設立 1983年6月 現在の株価(2020/4/22) 11.71USD
従業員数 190人 3ヶ月前比(2020/1/24比) 176.18%
事業概要
  • 癌や感染症に焦点を当てたワクチンや免疫療法(合成ワクチン)を開発
  • 予防用合成ワクチンと治療用合成ワクチンを提供
  • ヒトパピローマウイルス・子宮頸癌、鳥インフルエンザ、前立腺癌、白血病、B型・C型肝炎ウイルス、HIVなどの臨床プログラムを手掛ける
ワクチン
開発状況
  • INO-4800ワクチンを開発
  • 現在、ワクチンは臨床試験の第1段階であり、40人の参加者の間で実施されている
Moderna Inc. / モデルナ
本情報 業績
市場名 NASDAQ 売上高 60
業種 医療関連/バイオ医薬品 営業利益 -545
本社 米国マサチューセッツ州 時価総額 168.45億ドル
設立 2016年7月 現在の株価(2020/4/22) 51.20USD
従業員数 830人 3ヶ月前比(2020/1/24比) 142.42%
事業概要
  • RNA(mRNA)を利用した医薬品の開発を手掛ける
  • 細胞に指令を出し、細胞内たんぱく質を生成する新しい治療法を提供
  • 予防ワクチン、がんワクチン、腫瘍内免疫療法、局所再生治療法、全身分泌治療法、全身細胞内治療法などの分野で複数のパイプラインを保有している
ワクチン
開発状況
  • 独自のmRNA(メッセンジャーRNA)を発展させた新型コロナウィルス向けワクチンを設計からわずか42日で臨床試験に入った
  • 現在、従来のワクチンを圧倒的に上回るスピードで開発している
  • また、米国政府が同社に483百万ドルを供与。これを受けて2020年秋に供給を開始、2021年には1000万本/月の供給を目指している
Johnson & Johnson
基本情報 業績
市場名 NYSE 売上高 82,059
業種 医療関連/医療・ヘルスケア製品 営業利益 19,814
本社 米国ニュージャージー州 時価総額 4033.36億ドル
設立 1887年11月 現在の株価(2020/4/22) 152.99USD
従業員数 13,200人 3ヶ月前比(2020/1/24比) 3.15%
事業概要

一般用医薬品や栄養補助食品、抗感染、精神疾患、心循環器などの治療薬のほか、病院で使用される外科手術製品・臨床検査機器・診断薬を扱う巨大企業。

ワクチン
開発状況
  • ハーバード大学医学部に関連する研究所と協力して、今年1月からワクチン候補の可能性を探ってきた
  • 結果、研究者らは2021年初頭までに緊急使用のためにワクチンの利用できる可能性が出てきた
  • 世界で10億回以上のワクチンの供給を目指している
Novavax, Inc. / ノババックス
基本情報 業績
市場名 NASDAQ 売上高 34
業種 医療関連/臨床段階のバイオ医薬品 営業利益 -174
本社 米国メリーランド州 時価総額 11.01億ドル
設立 1987年 現在の株価(2020/4/22) 21.37USD
従業員数 168人 3ヶ月前比(2020/1/24比) 173.97%
事業概要
  • 臨床段階の米国バイオ医薬品企業
  • 組換えナノ粒子ワクチンおよび抗原性補強剤の発見、開発、商業化を目指している
  • また、呼吸器合胞体ウイルス、季節性インフルエンザと新型インフルエンザのための臨床開発などの感染症に対象を当て遺伝子組み換えによるワクチンを開発している
ワクチン
開発状況
  • NVX-CoV2373ワクチンを活用した臨床試験を5月中旬に開始すると発表
  • 対象者は130人で、ヒトにおいて高度に免疫原性である可能性を探る
アンジェス(株)
基本情報 業績
市場名 日本/マザース 売上高 326
業種 医薬品 営業利益 -3,270
本社 大阪府茨木市 時価総額 1212.54億円
設立 1999年12月 現在の株価(2020/4/22) 993円
従業員数 36人 3ヶ月前比(2020/1/24比) 65.22%
事業概要 大阪大医学部、森下竜一教授創業の創薬ベンチャー。遺伝子治療薬を開発し、また難病治療薬も販売している。
ワクチン開発状況
  • アンジェスと大阪大学は、プラスミドDNAにSARS-CoV-2がヒト細胞へ感染する際の足掛かりとなるスパイク(S)蛋白質の遺伝子を導入したDNAワクチンを開発中
  • 感染を予防したり、感染後に発症や重症化を抑えたりすることが期待されている
  • 研究・製造はダイセル、タカラバイオと共同で行っている
  • また、2020/4/21に非臨床試験に新日本科学が参画すると発表している
  • 対象者は130人で、ヒトにおいて高度に免疫原性である可能性を探る

一方、治療薬開発企業の株価の動きは次の通り。/2020年2月4日〜4月22日
●各企業の上段が2020年1月24日に対する増減率
●各企業の下段が株価でGileadはUSD、富士フイルムは円

 

 

  1月24日 4月22日 期間中の高値
Gilead Sciences 0.00% 24.07% 33.00% 3月17日
63.15 78.35 83.99
富士フィルム 0.00% -10.61% 8.10% 4月6日
5,704 5,099 6,166

富士フイルムの子会社「富士フイルム富山化学」が開発中の「ファビピラビル」は2014年に日本で承認された抗インフルエンザウイルス薬でm国が200万人分を備蓄。COVID-19を引き起こす新型コロナウイルスもインフルエンザウイルスと同じRNAウイルスであることから、効果を示す可能性があると期待されています。Gilead Sciencesが開発中の「レムデシビル」はエボラ出血熱の治療薬で、COVID-19の治療薬として応用することで最も有望視されています。

まとめ/私見
株は少々だけ、中長期な投資を行っていますが、米国株というのは業績が赤字でも全く関係なく、爆発的に上昇するのはいつもながら驚かされます。一般の投資かを含めて旺盛な投資意欲と次なるGoogle、Facebook、Amazon、Appleを目指す星の数くらいある起業家たちのエネルギーが相まって、10年後のメジャー企業が生まれていくのですね。

中でも人類存続の鍵を握るワクチン、治療薬に関わるベンチャー企業が躍進することで、次々に登場するであろうウィルスと戦える環境になって欲しいものです。ただし、ベンチャー企業単体でできるものではなく、国境を越えてメジャーの医療・製薬企業や研究機関、政治とも一体となった体制を構築する必要があるのでしょうね。

現状を見ると、どうもこんな大変な時においても、一部の国家間の無意味な争いや選挙を意識した政治家の思惑が見え隠れするのは少々、残念。環境問題に、戦争・テロを含めて、人間は歴史的なカタストロフィに学ぶことなく、同じ過ちを繰り返しているような気もします。

ごじゃごじゃ言い争っている場合じゃないと思いますよ。今こそ、世界的な連帯でこの危機を乗り越えないといけませんね!

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