オペラを事業的視点から見てみるー文化で儲けるのがいかに大変かがわかった。

前回のブログからの続きですが、興味深い資料をネットで見つけたので、紹介します。下記の論文は凄いです。レベルが高く、深堀りされており、大変勉強になりました。
詳しくは、【論文紹介】「メトロポリタン歌劇場の革新的アートマネジメント」佐藤敦子

データとしては古いですが、MET(メトロポリタン・オペラ歌劇場、以下MET)各国のオペラ劇場運営の収益状況がわかります。
オペラ事業01

驚くことに、METの公的補助金の割合の低さです。たったの1.1%、パリオペラ座が55.7%、バイエルン州立歌劇場が63.6%と比較すると、米粒くらいの支援しか、アメリカ政府や州は支援してくれないのですね。流石は、自由競争=Survival for Fitnessの国ですね。

ところが、民間の寄付金は、44.1%と高く。民間の支援で、METは成り立っているのですね。引用した論文によれば、寄付者の属性は次の通りです。

■寄付者の属性

  • METでの寄付金の9割は個人(家族企業・財団を含む)。
  • 企業からの寄付金は1割程度。
  • 個人寄付者は基本的にMETの観客であり、チケットを購入するだけに留まらず、METを支援したいという人々から寄付を集めている。

■個人寄付者の属性

  • 中心的年齢層:50~80 歳代。
  • 会員数:約5万人
  • 年間寄付額が25 万ドル(2千万円)以上の大口寄付者は、理事会メンバーとして、METの運営をモニターする権限を与えられる。
  • 大口寄付者(年間約1億円以上)は取締役会に相当するBoardのメンバーとなる。
  • 年間寄付額が5千ドル(40 万円)以上の個人寄付者は3千人。
  • 年間寄付額2,500 ドル以上5 千ドル未満の個人寄付者が2千人。
  • 個人寄付者が4万5 千人。

チケット収入だけでは、ビジネスが成立していないことは、次の事業収支の推移を見ても明らかですね。

オペラ事業02

それにしても人件費(給与・アーティストなどへのギャラ)の割合が凄いですね。実に総支出の75%くらいを占める!

それもそのはず、METには860名の常勤職員 + 時期によって200 名~1,200名の非常勤スタッフが加わり、オペラの上演にあたって、年間約300 名のオペラ歌手、約100名の専属オーケストラ団員、約80名の専属合唱団員が公演に参加。

オペラ・シーズン会期中は2,000人を超える大組織となるのですから、オペラとはまさに人が創り出す地球上・最高峰の芸術ですな。

そうした膨大な経費を補い、収入増を図るために、2006年から始めたのがライブビューイング。実際の公演からわずか数週間で、生のオペラ映像を世界に発信する試みですが、次の狙いがあると思われます。
●映像配信による収益確保
●ファンを増やし、生で見たいという関心を醸成する
●企業・人の協賛や寄付へのアクションを促す

という「一挙三得」を実現しているのが、マーケティング上、特筆されると思います。

と、思っていたのですが、引用した論文を見ると、
■ライブビューイングによる収益/2011年度

  • 収入はUS$33.4mm(27億円)
  • 同年のオペラチケットの売上がUS$110mm(88億円)であり、メディア関連事業からの売上額はチケット売上の3割相当まで伸びている。
  • ただし、映像制作・配信の経費がUS$32.9mm(26億円)のため、1億円の収益にとどまっている。

ということから鑑みると、
●ファンを増やし、生で見たいという関心を醸成する
●企業・人の協賛や寄付へのアクションを促す
が主な目的であることが、わかる。

以上、文化事業で収益を上げるというのは大変だということがわかりますね。しかし、METの凄いところは、事業収入を増やすために、チケット代を上げるのではなく、逆に値下げする方向に進んでいる点。

特に、学生に対しては、割引チケットや、正価100ドル以上の平土間席を公演当日にラッシュチケット(販売価格20 ドル、または25 ドル)として大幅割引で限定数提供する取り組みを行っているらしいです。

これは日本の歌舞伎が、1万数千円という強気な販売をしているのとは大違いですね。この学生向けというか、ヨーロッパでも立見の天井桟敷の席などは、千円程度で鑑賞できた記憶があります。

ファンを増やすという意味で、学生や10代、20代の人に、千円程度で開放する日があっても良いのではないでしょうか?

映画でも夫婦50歳割引とかシニア割引があるが、むしろ若者割引で、「ワンコイン=500円」を設けたら、どうでしょうか?次代を担う若い人たちに、伝統文化に触れる機会の拡大をはかって欲しいものです。

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