プッチーニ「蝶々夫人」ーメトロポリタン・オペラ/ライブビューイング鑑賞記

昨日、メトロポリタン・オペラのニューヨークのライブを映像で世界配信するプログラムを鑑賞してきました。

●場所:なんばパークスシネマ
 5月13日(金)まで上映しています。
●鑑賞日:2016/5/7
●タイトル:METライブビューイング2015-16
●演目:プッチーニ「蝶々夫人(マダム・バタフライ)」
●公式サイト:http://www.shochiku.co.jp/met/program/1516/#program_08

■作品に対する感想
日本の衣装や日本人の所作などに、突っ込みどころが多くあれど、というより、日本の解釈が無茶苦茶でした。仏教と神道の混同、坊主が神道の儀式をして、関取みたいな侍女・・・でもそのあたりは、差し引きまして、観ないとね。私たちも外国文化をよく誤解、混同していますものですから。

まあ、そのあたりは大目にみて、心に響く逸品でした。

オペラは超初心者ですが、話すように歌い、登場人物の心が時に響き合い、離れていく中で、悲劇が紡がれていくドラマチックな展開に、心躍りましたね。

歌声だけではななく、メトロポリタンの舞台芸術はまさにアート。日本の幽玄美も外国人にしては、よく研究していて、というより、だいぶ勉強して、リニューアルしているみたいです。登場人物の所作と黒衣の調和美は、日本的誤解を差し引いて、視覚的に美しかったですね。

特に、人形浄瑠璃は相当学んだのでしょう。三人の人形遣いがあやつる蝶々夫人の子どもの人形と蝶々夫人とのやり取りは、絶妙でした。

オペラファンならずとも歌舞伎、浄瑠璃、ミュージカルファンにも見応えのある、古今東西の垣根を越えた秀逸な作品に仕上がっていると感じた次第です。

後、私と同じように、イタリア語がわからない方も映像なので、日本語の字幕もあり、大変助かりました。

加えて、幕間のバックステージの様子や出演者のインタビューなどを見られるので、劇場に観に行く時とは異なるアングルで、芸術の舞台裏が拝見できるという映像作品ならではのプレミアムがあるのも、うれしい限りです。

■MET(メトロポリタン・オペラ歌劇場)のマーケティング力の感服!
 ニューヨークの上演からわずか数週間後に、映像として世界へ発信するMETの試みは特筆されます。

スタートは、2006年。今年で10周年、世界70カ国・2,000ヶ所で上映されたというから、凄いですね。

きっかけは、アメリカ経済の衰退。市民や民間企業の協賛金で成り立っているオペラやバレエなどの総合芸術。企業のフィランソロピー(文化貢献活動)も景気後退で、協賛金が目減り。

悲しいかな、公演収入だけでは、経営が成り立たない総合芸術。映画や生でオペラやバレエなどを鑑賞された方は、すぐに理解できると思いますが、舞台装置・芸術、豪華絢爛な衣装に、トップアーティストの出演料などを、賄えないのですね。

そこで編み出されたのは、このライブビューイング。
●映像配信による収益確保
●ファンを増やし、生で見たいという関心を醸成する
●企業・人の協賛や寄付へのアクションを促す
という「一挙三得」を実現しているのが、マーケティング上、特筆されると思います。

このMETの試みは、パリオペラ座のライブビューイング、松竹のシネマ歌舞伎へとつながっているから、かなりの良いインパクトを演劇界に与えたと言えますね。

■余談:パリオペラ座の場合は、政府が支援
パリオペラ座は、NYのメトロポリタン・オペラが独立採算で、運営している経営スタイルと異なり、政府が支援しています。

★パリオペラ座のバランスシート
劇場単体、オペラやバレエだけの収入だけでは悲しいかな、採算は取れないようですね。収入の50%以上が国からの助成金〜パリ・オペラ座が公開しているバランスシートを見ると、毎年約1億ユーロ(約106億円)を国が支援しているわけです。
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文化事業の公演収入だけでは商売の妙味がないという点から、日本を含めて多くの国で文化振興に消極的になるわけですね。それに加えて、不景気になるとすぐにやり玉に挙げられる。

聞くところによれば、パリオペラ座の裏方を含め従業員が約1,600人。劇場の維持費、舞台装置の創作費や衣装費、芸術監督やスタッフ、出演者などのギャラを考えると、政府の支援なく、独立採算というのは難しいでしょうね。

それでは、「文化事業は儲からない」という事実にもかかわらず、フランス国家は何故そこまでして自国の伝統文化の保護を行うのでしょうか?それは国家のプライド、ブランド構築ではないでしょうか?

劇場自体、オペラ・バレエというコンテンツが磁力になり世界中から鑑賞しに来るという単純収入、それに加えて宿泊費、食事代、ショッピング費用を加えるとかなりの相乗効果が見込まれます。

それに加えて、国家の宝である歴史的資産である劇場、バレエ、オペラを保護し、発展させることでフランスのブランドとなり、トータル的には国家のプラスになるという考えだと思います。

そして、文化・芸術国家というブランド育成によって、政治・経済交渉にも有利に働くという認識も高いのでしょう。

翻って、日本。歌舞伎は商売上手に採算が取れているようですが、前橋下市長の文楽への助成金減額など、冷たい仕打ちに代表されるように、結構、文化芸術に対する支援については、冷たいですね。

オリンピックなど、一時的に派手なイベントもいいですが、古より受け継がれてきた日本の伝統芸能を未来に紡ぎ、世界へ発信していくマーケティング力を、METに習い、醸成していく必要があるでしょう。

●パリ・オペラ座 劇場内の様子

■追伸:下世話な感想
見ていて、作品とは関係なく?一番感じたことは、下世話ですが、「ゲスの極み」と「ベッキー」がつくりだしたストーリーに少し似ているな〜ということでした。蝶々夫人=ベッキー?をたぶらかす、アメリカ海軍士官ピンカートン=「ゲスの極み・川谷」という感じです。ベッキーが蝶々夫人ほどのいとおしさ、一途さはないと思いますが、欺す(結果的に)ピンカートンは、まさに「ゲスの極み」でしたね。

しかしながら、文楽でも歌舞伎でも、現代の悲劇的なストーリーもしかり、感情移入する名作というのは、必ず「ゲスな野郎」か「本能・官能で動く女性」などが登場するのは、致し方のないこと。何といっても善人、平凡な市井の人々だけでは、物語にならないのですね。それは、シェークスピアの四大悲劇や我らが近松門左衛門の「曽根崎心中」や「女殺油地獄」もしかりです。

野望を叶えるためには、手段を選ばないマクベスと王妃、禁断の愛のためには妻子も生業も捨て去る「心中天網島」などです。

ただし、ゲスの極みとベッキーの実話よりも、蝶々夫人、シェークスピア、近松も上質な芸術に仕上げられているので、ゲスとは比べるのは大変、失礼だということは十分承知です。

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