近松門左衛門の「心中天網島」はやっぱり文楽の最高傑作だ!

昨日(2013年4月7日)、大阪の国立文楽劇場で近松門左衛門の「心中天網島(しんじゅう・てんのあみしま)」を鑑賞してきました。
文化嫌いの橋下市長の理不尽な文楽パッシングの恩恵で劇場内はほぼ満員でした(笑)。

大阪の古地図(1691年・元禄4年当時)。
「心中天網島」の舞台になった当時のマップです。
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主人公の治兵衛の「紙屋(所在地・天神)」、遊女・小春が奉公した「紀の国屋(所在地・新地)」など、登場する店などを転記しています。

そして、心中をする道行きは点線で表しています。梅田橋を渡って、桜橋、蜆橋、大江橋から天神橋、天満橋、京橋などを通って網島の大長寺の当たりで、二人は命を絶ってしまいます。
大阪馴染みの名所が出てくるので、大阪人にはたまりまへん!!!

この演目は2回目の鑑賞なんですが、何度でも見たいと思う傑作ですね。 あらすじは、簡単に言えば、次のようになります。

大阪・天満の紙屋の若旦那・治兵衛。この男、妻子もありながら、新地の遊女・紀伊国屋の小春に恋狂い。

見かねた妻「おさん」と治兵衛の兄「粉屋孫右衛門」などが、二人の仲を裂こうとあれこれ画策するが実らず、とうとう心中してしまうという、どうしようもない駄目男と恋に一途の薄命の遊女の物語です。

しかし、この物語は傑作です。近松門左衛門の人間の業の深さを美しい大阪弁の数々で表現していく詩人としてのレベルの高さ、また飽きさすことなく聴衆をぐいぐいと引っ張るストーリーテラーとしての力量を堪能できます。

そしてそれに匹敵する義太夫の謡と人形遣いの方たちの精緻な技が見事に調和した舞台芸術に酔いしれた一夜でした。

プラス!大阪の名所〜江戸時代の新地・天神・天満に、クライマックスの「道行・名残の橋尽し」の場面では、天満橋、梅田橋、緑橋、桜橋などの「橋尽し」!大阪の「八百八橋」の由縁である名所が出てくるので、大阪生まれの人なら、ワクワクできますよ!

文楽が始めてという方に、心よりおすすめする逸品です。

PS:伝統文化継承に公的支援が必要か?

20世紀の高度成長期以降、商業主義がはびこり、自由競争の原理のもと、金を稼がない文化は消えていく運命にあるようです。

特に、不景気の今、その兆候が強まっているような気がします。国や自治体も金がないのはわかりますが、日本固有の伝統文化がなくなっていくのは、国の恥であり、国家の品格にもかかわります。

伝統文化が消えていき、人気のある、金の稼げるカルチャー・風俗だけ残ったら、日本はどんなに味家のない世の中になるかを想像してみましょう。

極端に言えば、AKB48、外国の文化を真似た劇団四季だけしか残らないとしたら・・・外国から見た日本の評価も下がり、外国人旅行客も減るでしょうし、日本のブランド力も落ち、経済取引や外交に悪影響を及ぼすでしょう。

娯楽には2つのタイプがあると思います。
1.何も勉強せずにぱっと見て楽しい、感動するもの
2.勉強して造詣を深めて見れば、どんどん面白くなっていくもの

後者の2に属する娯楽が、文楽や歌舞伎、演劇やオペラ、バレエだと思います。

造詣を深めて楽しくなる懐の深い伝統芸能を大切にしない国=表層的な軽薄短小の国・・・と見なされていくに違いありません。

そうした意味で、文楽の灯は消してはならないと強く思う次第です。もちろん、公的支援だけに頼らず、私たちも劇場に足を運ぶことで、応援していくことも必要でしょうし、演じる側・興行側も利益を生む仕組みに、もう少し地恵を絞らなければ、ならないでしょう。

私も微力ですが、お金を支払う側として、公演に足を運ぶという行為を地道に継続していきたいと思います。

最後に、フランスの文化政策の現状を追記します・・・昨年度に書いたブログの再校ですが、フランスでは国の威信をかけて、文化振興を行っています。それを最も具体的に示す事例が、何とパリ・オペラ座の劇団員は公務員!・・・年金付き!なんですよ。そのことだけではも、いかに文化を大切にしているかがわかりますね。

★パリ遊学その2:パリオペラ座の夜
〜パリオペラ座の夜に見る経済的インセンティブ〜
長年の夢であったパリオペラ座でバレエ版「マノン」を鑑賞しました。世界最高峰のバレエは言うまでもなく、劇場のネオ・バロック様式の彫刻の数々、豪華絢爛の装飾の空間に身も心も奪われるひとときでした。そうした感動と同時に、文化を基点とする経済的インセンティブの大きさについても考えさせられる一夜ともなりました。

それではどのようなインセンティブが生まれるのでしょうか?ご興味のある方は下記のスライドショーをご覧ください。

映像の来場者のゴージャスさを見る限り、チケット収入もさることながら、来場者のファッション代、前後の飲食代を年間で総計すると相当な額になることが想像されます。それに加え、裏方を含め従業員が約1,600人という雇用も創出しているわけです。

しかし、劇場単体、オペラやバレエだけの収入だけでは悲しいかな、採算は取れないようですね。収入の50%以上が国からの助成金〜パリ・オペラ座が公開しているバランスシートを見ると、毎年約1億ユーロ(約106億円)を国が支援しているわけです。
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文化事業の公演収入だけでは商売の妙味がないという点から、日本を含めて多くの国で文化振興に消極的になるわけですね。それに加えて、不景気になるとすぐにやり玉に挙げられる。

それでは、「文化事業は儲からない」という事実にもかかわらず、フランス国家は何故そこまでして自国の伝統文化の保護を行うのでしょうか?それは国家のプライド、ブランド構築ではないでしょうか?

劇場自体、オペラ・バレエというコンテンツが磁力になり世界中から鑑賞しに来るという単純収入、それに加えて宿泊費、食事代、ショッピング費用を加えるとかなりの相乗効果が見込まれます。

それに加えて、国家の宝である歴史的資産である劇場、バレエ、オペラを保護し、発展させることでフランスのブランドとなり、トータル的には国家のプラスになるという考えだと思います。

そして、文化・芸術国家というブランド育成によって、政治・経済交渉にも有利に働くという認識も高いのでしょう。

サルコジ氏のとった財政緊縮策はパリオペラ座にも波及し、助成金カットやダンサーを含めた裏方のスタッフの年金カットにまで焦点に当てられたようですが、結局、サルコジ氏はオペラ座に対する削減の実施を止めたそうです。

が、結局、緊縮策を取るサルコジ氏は先日の大統領選でオランド氏に敗北しましたね。フランス国民はやっぱり、緊縮というのは嫌いなようですね。

話は長くなりましたが、パリオペラ座の夜は最高峰のバレエに酔いしれるというほかに、文化が発する経済的インセンティブを含めたパワーについて考察できたという、至福の時間となりました。

世界中が不景気なので、大きい声では言えませんが、日本の「お得」「安いよ〜」の連呼にはもう癖壁!「いくら安いと言っても、要らんモンは、イランわい!」と叫びたくなりますね。と言うわけで、最高のドレスを着て、最高のパフォーマンスを見ることの経済的インセンティブを日本は忘れているのではないでしょうか。

日本では休日を増やす、長期に旅行に行く、スポーツを楽しむ、音楽やダンス、文化活動など、心の豊かさに投資する・・・そうしたマーケティングはまだまだ開発の余地があるはずです。

消費税アップや緊縮策をする前に、世界に冠たる歌舞伎や浄瑠璃、日本料理のワールドワイドのマーケティングを戦略的に行うべきではないか!

日本もエエ加減、世界に誇る劇場をつくったらどうですか?日本の器はしょぼい、セコイ、同じならゴージャスに行こうぜい!・・・と強く思うわけです。

以上、今のご時世、派手に投資せい!という話を書くといろいろ非難されそうですが、今の不景気に文化事業推進のお金が出にくい、また出せないというのも事実・・・なら、何故バブル期に歴史的に、未来永劫残る名劇場を建設できなかったのか?と、悔やまれてなりません。

事実、フランスもオペラ座などの歴史的建造物は19世紀のバブル期に造ったのですからね。日本は何故、それができなかったのか!いったい、あのバルブ期に降って湧いた金はどこに要ったのでしょうね?

おっと、肝心の演目の概要を書くのを忘れてました。
●演目:マノン あらすじはこちらより(オペラ版の内容ですが、話は概ね同じです)
●鑑賞日:2012年5月7日(月)
●場所:パリオペラ座 ガルニエ宮(Palais Garnier)
●配役
・マノン:イザベル・シアラヴォラ Isabelle CIARAVOLA
・青年グリュー:ロリアン・マニュネ Florian MAGNENET

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